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「むし歯は減らせているのか?」と統計の話 [仕事]

私の表の顔はハミガキ開発研究者で(「雑草愛好家とか、科学雑学マニアとかが
「裏の顔」ってことでもないけど)、歯科医師ではないのだが「むし歯は減らせているの?」
とかはずいぶん真剣に考えているつもりでいる


 (マレーシアではまだまだ低いデンタルケア意識)

 写真は、マレーシアに旅行したときの新聞の記事のコピー。
 大きな歯の模型で遊びながら意識を高めようということのようだ。
 記事のタイトルに言うほどかの国の意識は低くないと思うけど。
 むし歯予防意識を高めようという活動は少し懐かしい印象だ。
 日本では中学生でもむし歯が1本もない子供が3分の1に達した。
 親の世代のような痛みで泣きっ面の子供は歯医者に行っても見ることはない。

  今日、日本の子供のむし歯は減っている。これは共通認識だろう。
  ただ、なぜ減っているのかは、よくわからない。
  大人のむし歯が減っているのかはよくわからない。
 私は「大人のむし歯も減っている」派だが、意見は分かれる


(「厚生省歯科疾患実態調査では減っていないだろう」という方がいれば
 別途説明することにするが、それは今回の主旨ではない)。

 この辺りは、「専門分野」であって、言い回しが小難しくなり勝ちで、
エッセンスだけにするべく、ガンバってみるのだが、いつも困ってしまうのは
「統計」というやつが実に小難しくて、難儀で、考え切れない。
 まず、そんな統計解釈は大変だという話を少し書いてみたい。

 歯医者さんや別分野の統計調査関係者から、反応があればと思う。

 

という流れで、「統計」の話を少しだけしたい。

そもそも
「歯を磨くとむし歯ができない」という確かなデータがない。
「むし歯が減っている」統計があり「よく歯を磨くようになった」統計が
あると、「よく歯を磨くようになったから→むし歯が減った」とするが、
「歯を良く磨く人ほどむし歯が少ないか」というと、いくら調査しても
なかなかそのような結果は得られない。「相関」というのがない。
統計データにはいくつもの、混乱させる因子がかかわってくる。

以下、論理パズルみたいな話だが、

例えば、
むし歯になった子供は歯をよく磨くようになる(毎日小言を言われるから)。
すると、調査では「歯をよく磨くと→むし歯が多くなる」に見える。
あるいは、
「歯を良く磨く子供にむし歯が少なかった」という調査結果があっても、
たいていの場合、親に言われてきちんと歯を磨く子供は間食もしないし、
ジュースは控えめ、野菜もきちんと食べる、夜更かしもしない、虐待されて
いない(これらは証拠がありそうなむし歯関連の因子である。異論もあろうが)。
比較対照がないと歯を磨いたことが原因かどうかはわからないこととなる。

つまり「歯は磨かないが他はきちんとした生活をしている子供」と比較すれば
いいのだが、あるいは「歯だけはきちんと磨くが生活は乱れている」という
子供との比較ができればいいが、そんな子供がいたら特別な宗教とか家系とか
別の因子が入ってくるだろう。これらも無視できず、ますますわからなくなる。
 かつては(歯科の教科書では有名な話なのだが)、海外の知的障害者の施設で
「食後にキャラメル様のお菓子を食べさせるとむし歯が増えるか」という実験
が為されたが、今日、そんなことは(某魔法小説の敵の名前のごとく)話題に
することもはばかられる。禁止されている実験である。

唯一、散々検証されて、フッ素塗布やフッ素ハミガキなど「フッ素の利用」
だけが有効性を認められている。ただ、2本できるはずのむし歯が
1本になるだけとも言える
(フッ素の話は歴史的に反対、賛成の議論が激しく、よほどの論理武装をしてから
でなければ、ただ細かな間違いを指摘され軽蔑されて、建設的な議論ができなく
なっているように思う。自分のレベルではフォローするのがやっとだ。ただし立場を
はっきりさせる意味で書くが、私はフッ素は安全で有効だと思う。一方、効果的に
利用しても、平均むし歯本数が半減するだけだとも思う。それぞれの人にとっては
自分や自分の子供が大切であって平均値の話ではないのであるが、今のところ、
フッ素ハミガキで磨いても、むし歯になる場合はある。
どれほど効果はあっても、むし歯ができちゃった人は不満が残るかもしれない)。

今の親の世代では、痛みをこらえて歯医者で1時間も待つ経験をした人が
多くいるはずだ。今日の子供はそんなことは特殊ケースとなった(ようだ)。
ハミガキが多少の貢献をしたのか、またこれから更に貢献するのか、
割とまじめに考えている。変な責任感の下、サービス残業の日々を送っている。

むし歯は一例で、歯茎の健康、ホワイトニング、そして気持ちの良い毎日
にもハミガキは不可欠と思う。一方、これらの問題を錠剤1個で解決する
ような世界も夢想しないわけでもない。

もとにもどると、
これらをうまく伝えたいのだが、統計データの混乱がずいぶんじゃまをする。

これが私のかかわる「お仕事」と小さな心の葛藤の断片だが、
反応がないようなら、消してしまって、この世界と繋がれそうな話題を
書き連ねようとも思う。

でも、・・・
本心は、歯医者さんとか、衛生士さんとか、むし歯になりやすい人とか、
歯が白くないとお悩みの人とかから、反応があるといいなと、
ドキドキしている。

まあ、しばらく読まれないかもしれないので、気長に待とう。
時間がたっていても、よろしければコメントして頂ければと思う。


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せいさく0319 

せいさく0319と申します。
掲載されている日記を興味深く拝見させていただきました。事後の御連絡となりましたが、当方の記事にリンクをはらせていただき、日記を紹介させていただきました。

リンクをはらせていただいた件について、何か差しさわりがございましたら、その旨、御連絡ください。何分、ブログ初心者なもので、ご容赦ください。

また、よろしければ、今後とも、そちらのサイトを拝見させていただくつもりです。よろしくお願いいたします。

せいさく0319 
サイト名 気になるブログ10件
mail:noguchi0319@mail.goo.ne.jp 
http://plaza.rakuten.co.jp/kininaruburogu10/
by せいさく0319  (2005-09-25 11:49) 

春分

せいさくさん、いらして頂きありがとうございます。

取り上げてみた内容についてはそれなりにデリケートな内容と思っており、
リンクについては最初少し警戒致しました。しかし、せいさくさんのブログを
拝見し(お書きになった「ブログ初心者」というのは冗談かと感じましたが)、
知的でまじめで常識を共有し信頼できる方と思いました。

堅苦しい話をしてもと思ってましたが、もう少し書く意欲が生まれました。
勇気を頂きましたこと、ありがとうございます。
by 春分 (2005-09-25 12:31) 

mamire

>時間がたっていても、よろしければコメントして頂ければと思う。
ということなので書いてみました。
気がついていただけなければそれでもいいわ。
確かに、小学生の虫歯は減っていますね。
私の時代は、虫歯が当たり前でした。
実は、歯医者に言わせると、私はすごく強い歯を持っているらしいです。と言っても、6歳臼歯は二本ともありません・・・が。
歯医者には、20年くらい行ってなかったけど、歯槽膿漏が心配になったので、最近は、年に一回は行こうと思っています。
上の娘は、やっぱり歯が丈夫。でも虫歯だらけ。
下の娘はすごく歯が弱い、でも、虫歯はほとんどありません。
もって生まれた性質に、どうのように対処しているかがお分かりですね。
上の娘は、看護師です。忙しすぎて、歯医者なんか行けん!と申しております。
by mamire (2006-01-16 20:56) 

春分

mamireさん、
気がついてしまいました。ありがとうございます。
強い歯。硬い歯かな。でも20年歯医者に行かなくていいのは強い!
もしスキーで歯が折れたりしたら、欠けた歯を譲ってほしいです。
お子様の例はなんともわかりませんが、兄弟で違うというのはよく聞くことですね。うちの奥さんは歯が強く、目が悪い。私は逆。子供たちは顔は私に似たとこともありますが、歯と目は奥さん似です。歯は強く目は良いとはいかなかったようです。まあ、逆じゃなくて良かったですが。
by 春分 (2006-01-16 22:17) 

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