日光学:東照宮平成の大修理 [日光]
松島で見た風景も載せないといけないですが、まずは東照宮を。
東照宮は修理中です。
その舞台裏を公開するという企画がございました。
JR東日本による日光の様々なことをその道の先生が教えて下さる
「日光学講座」の人気企画です。
既に何回か実施されていたようですが、私の応募した24日の回は
40人の定員がある回でしたが、応募した時キャンセル待ち10名と
絶望的な様子でした。「キャンセルされる方は少ない企画です」と
言われていましたので。
それが1ヶ月ほど前に電話がかかって来てOKとのことで。
奥さんと2名で出かけて参りました。
それは極彩色でした。
そこは丁寧に説明されたので書かないわけにはいかないのですが、
そもそも「極彩色」とはこの場合、漆で仕上げた上に天然の岩絵具
で彩色したものにだけ使われるそうで、日光の数々の彩色はその
極彩色だそうです。つまり今日も行われている日光東照宮の「平成
の大修理」に使われる絵の具は全て天然の貴石を砕き粉にし膠で
練った岩絵の具で塗られているとのことです。洋絵の具はもとより、
合成の岩絵の具(新岩)も一切使わず、膠も金箔・金泥も昔ながら
の国内の天然のそれを使っているそうです。「日光東照宮は日本一
でなければならないから」という信念に従って。
そんな修理の舞台裏を見て来ました。
狭い工事の足場を登って行くと、そこには修理の現場が広がりました。
日光東照宮のすごいところは、維持管理のための組織や職人が
常時いることだそうです。
そもそもこのような漆塗り極彩色の造形の数々は屋外にあるべき
ものではなく、定期的な修理が不可欠であるとのことです。
この装飾を任された狩野派はそれを知っていたのではないかと、
説明して下さった先生は言っておられました。つまりは未来永劫に
及ぶ狩野派の仕事場を確保したのだと言われていました。
それが本当かどうかはわかりませんが、徳川の世が終わった後も
明治の大修理、昭和の大修理、平成の大修理と定期的な修理を
続けているとのことでした。
そんなエンドレス修理が常設の財団法人日光社寺文化財保存会
を維持しているのだな、きっと。
私は頭が閊える狭い場所で、そこにおかれた筆や乳鉢も見られて
作業の現場なのだと良くわかりました。
もっとも、使っている道具は普通の洋筆だったり、ティッシュペーパー
だったりして、思ったような神聖・厳密な感じではなかったです。
でも、ここに見るように今なされている修理を目の当たりにできました。
この写真の右側はまだ金泥を塗られていないし、中央はマスキングされ
まさに塗られている部分であることがわかります。
土曜日だけど仕事をしている人がいらっしゃいました。
説明頂いたのは保存修理の主任のお1人でしたが、説明の中で
「私は独学であるが、近頃は美大出の人もこの仕事がしたいと
ここに入ってくるが、なかなか続かない」と言われていました。
同じことを繰り返す単調な仕事なのだと言っておられました。
一方で、多くの自身の工夫や修理するからこそわかる古人の工夫
について語っておられましたので、実際は単調な繰り返しではない
ようです。
ともかく丁寧な上に丁寧を重ね、何十にも塗られたそれは
驚くばかりの仕上がりです(説明しているのが主任の先生)。
縁起のいい亀甲に四片花の紋の上には縁起のいい枇杷の意匠。
ちなみに先生は「これらは非公開であるけども写真は許している」
とおっしゃったのですが、一緒に説明してくださっていた神職の方に
「ブログへの掲載もいけないのか」と聞いたところ、出版物などを
前提に公開を制限しているのでかまわないとの答えを貰いました。
イスラムの神殿のように、宗教的な理由で神聖な部分の写真を
控えるべきであるなら許可されても遠慮すべきでしょうけども、
JRのポスターでは写真撮影禁止の本殿内部や鳴き龍の写真を
使っておられますので、どちらかと言えば人間世界の事情でしょう。
そうなら、ここでは許可を頂いた範囲として載せていいでしょう。
本殿は撮らせてもらえませんでした。
40人で見て回るには狭すぎる現場でしたので、2グループに分かれ
一方が見ている間に他方は本殿のお参りと見物をさせてもらったの
ですが、普段は入ることのできない大杉戸の裏の将軍の控え室にも
入れてもらえました。これだけでも相当ありがたい経験でした。
将軍の間は天井が龍の絵の並ぶ三段折り上げ格天井でした。
折り上げ格天井(おりあげごうてんじょう)がどのようなものか説明は
ちょっと面倒なので致しませんが、こう言った建築物では知っておくと
便利な建築用語ですのでお好きな方は確認下さい。ここは三段でした。
なかなかないです。
天井もそうですが、ここは一段とすごい装飾でした。
それともう一つ、
普段は見られない本殿の側面や裏面を見せてもらえました。
(クリックすると大きくなる写真です。)
本殿の裏もすばらしい。
オナガに見えたけどもそうじゃなく極楽に住む鳥のイメージか
(クリックすると大きくなる写真です)。
普段は見られない天女(クリックすると大きくなる写真です。)
そう言えば、ねこじたんさんが花見をしようと言ってます。
私は参加しようかな。
追記(4月1日):
この企画で頂いた資料は38ページに及ぶ細かなもので、
日光東照宮と平成の大修理についても様々な情報が書かれ
それだけで大変貴重なものでした。
写真を多用した修理の細かな様子についても書かれていましたが、
それ以上に背景となるお役所的な数値情報は面白いものでした。
例えば、「栃木県の重文建造物は47都道府県中第6位(近年大阪
に抜かれた)~全国4363棟中153棟(うち国宝9棟)。しかもこの
うち110棟が日光市に所在。」とか。
「平成21年の国の建造物修繕経費65億円、修繕事業100件。
このうち日光5.03億円~」
まあ、案外少ないなとも思いますが、なかなか多いです。
日光の場合、国の補助金は50%と言うことで年間予算は10億と
言うことになるのでしょう。20人くらいが従事していれば人件費で
3、4億円は出そうだから、岩絵の具や金箔がいくらかはわからな
いものの、妥当なところかと思われます。
もっとも、第一期一次事業は6ヵ年計画で東照宮だけで20億円程、
輪王寺や二荒山神社もあってなのでなかなかなものです。24年に
東照宮の一次事業は終了ながら、次がまたあり、修復はエンドレス
ということですしね。
(クリックすると大きい写真が開きます。)
追記のおまけですが、
ながらく気になっていた話をこの機会に神職の方に聞いてみました。
私「権現様と北極星を重ね合わせて見る日光にあって、東照宮の主要
な建物を線で結ぶと北斗七星を描くという話は本当か?北斗七星には
見えないのだが?」
神職「そんな話は聞いたことがないです。」
単なる恥ずかしい質問じゃないか。
何年も何年もそうやって人の手でつないできた歴史ってことですね
なんだかすごいなって改めて思います
by amane (2012-04-01 00:32)
極彩色、、素晴らしいですね。維持管理が、、大変!か、、しかし・・・
それを見るチャンスが当選されて良かったですね、、、。
改修後の日光に行ってみたくなりました。
by ハギマシコ (2012-04-01 01:42)
すごいですねえ。さすが。将軍家。極彩色で補修が終わった後が楽しみです。
日光の当たりは地震も関係ないところなのかなあ。
それにしても行きたくなりました。
by あーちゃ (2012-04-01 05:52)
日光は豪華ですね。
by Silvermac (2012-04-01 06:21)
貴重なお写真ですね。
それにしても鮮やかです。
by とり (2012-04-01 07:23)
細かな仕事ですねぇ。「職人」でなければ務まらないのかな。
で、狩野派は今も生き残っているのだろうか?
by キタノオドリコ (2012-04-01 08:06)
好き嫌いは別として、素晴らしい技術ですね~
写真だけでもそれは伝わってくるのに、目の当たりにしたら
もっとすごいんでしょうね。
by barbermama (2012-04-01 08:27)
貴重な体験をされましたね。
今年修学旅行で行く長女も興味津々です。
by みつなり (2012-04-01 08:29)
お写真だけでもすごいな〜と思うのですから
実際の輝きや相当だったのでしょうね。
by ゴーパ1号 (2012-04-01 12:06)
塗り替えるといっても凄いことなんですね。貴重なツアーでしたね。
by めもてる (2012-04-01 12:11)
貴重な経験をなされたんですね!
以前、TVで作業されているところを見たことがあります。
by 斗夢 (2012-04-01 14:33)
東照宮がいつまでも美しくいられるために、
大変な努力と費用が費やされているのですね。
貴重な経験をなさったのですね。
by きまじめさん (2012-04-01 15:18)
修復中ということは・・・・5月に行く予定なのですけど、カバーがかかっているのでしょうか?いずれにせよ、こうして拝見できたのですから、満足です。
by okko (2012-04-01 16:14)
普段見れない所を見られるって
得した感が有るのと・・ちょっとの罪悪感が芽生えます^^;
by くまら (2012-04-01 17:27)
重要文化財修復の現場レポート
貴重な記録になりますね。
それにしても極彩色の鮮やかさ!
特に青い色が美しいですね。
by タックン (2012-04-01 20:52)
修復の技術が、綿々と維持されているところが何と言ってもスゴイです。
by sakamono (2012-04-01 21:59)
普段見られない所を拝見できたし、それがまた美しいし、
未来永劫に及ぶ狩野派の仕事場を確保した・・・とか、
膠も金箔・金泥も昔ながらの国内の天然のそれを使う・・・とか。
※東照宮が造られた時、高価な舶来品があったと思うのですが。
興味深い記事でした。
春分さんが見学に当選されて本当に良かった。
by 招き猫 (2012-04-02 17:07)
ブログで写真を使うときなどは、やはり気を使いますよね。
春分さんのように、断りをいれることが必要と思います。
わたしも出来るだけ実践しています。
by ナツパパ (2012-04-03 18:09)
こんばんわ 久しぶりに春分さんの記事拝見しました。素晴らしい経験をされましたね。私も以前に修復中の現場を見せて頂いたことがありましたが、貴重な写真をたくさんみせて下さってありがとうございます。日光社寺文化財保存会の職人さん達の技で日光の美が維持されているのですね。
by れもん (2012-04-16 00:21)